これから開業するあなたへ。食えない行政書士にならないために、開業準備は大丈夫ですか?

退職する前に

独立、開業には、退職前の準備が重要

長年の勤務、お疲れ様です。楽しくもあり、また、苦労の連続だったかと思います。
でも、これから行政書士になりたいとお考えの方で、残念ながら稀にいらっしゃるのが「行政書士になればもう雇われないから楽々」とか「がんばれば月に100万円でも稼げるんじゃないの」などと軽く考える人です。

ただ、会社員や公務員時代に関連する業務で経験した実務を行政書士で生かすならともかく、行政書士業務には沢山の業務があります。どの業務をするのかを決めるだけでも大変ですし、その経験を活かすべく、どうやってお客様から依頼を貰うかを考える必要があります。

また、営業経験のない方もいらっしゃると思います。営業経験がなく行政書士になると、お客様を獲得するのは至難の業です。最初は友人、知人から開業祝いで依頼されるかもしれませんが、後が続かないのです。見込み客が0人の状態から依頼してくれるお客様を1人獲得することは容易なことではないのです。

以前、雑誌の広告で「行政書士になれば人生が変わる」ようなイメージのものがありましたが、マーケティングも習得せずに開業しても依頼などされません。開業本等の「月に100万円」だの「年収1000万円」だのと、書籍を売るためのコピーライティングに踊らされてはいけません。

とくに行政書士は個人事業主ですから、お客様から報酬を頂かない限りお金は入ってこないのです。ですので、開業する際には、収入がなくても生活がしばらく出来、事務所の広告費も毎月4,5万円出せるくらいの十分なお金を準備して、マーケティングの習得をしてからにしましょう。

ただし、私の経験で独立・開業は、色々な社長さんや個人事業主の方々と知り合え、毎日が凄く楽しいのは事実です。子育てと並行して仕事をしているため、時間と体力が結構しんどいですが充実しています。とはいえ、こればかりはやってみないと分かりませんけどね。全く依頼がなく、サラリーマンの方が良かったと実際に話してくれた人もいましたからね。

開業するときは、準備を怠りなく。

退職したら健康保険はどうするの?

退職したら今まで加入していた社会保険や共済組合保険の資格は喪失します。じゃ、保険は国保それとも任意継続、どちらがいいの?と迷います。

ここら辺は、勤め先の人事課や市町村役場の国民健康保険の担当に聞いた方が正確です。あとは次のホームページを参考にしてみてください。
国保と任意継続を比較
国保と任意継続の保険料を比較

【重要】健康保険は重要です。「扶養家族が多く、任意継続のほうが国保よりも保険料が安かったのに、調べもせずに国保に入ってしまった」などの取り返しのつかないことがないように、必ず勤務先の人事課や役場の担当課に聞いてください。(ただし、聞くのは退職届を出してからにして下さい。)

開業したら直ぐに依頼はくるの?

残念ながら、開業する人の中で少なからずいらっしゃるのですが、「開業さえすれば、依頼がくる」と思っている人がいます。私もそうでしたので、お気持ちは分かります。でもほぼ依頼はきません。チラシを撒こうが、ホームページを公開しようが、異種業種交流会に参加しようが、残念ですが依頼などは来ないのです。

では、なぜほぼ依頼がこないかというと、見知らぬ誰か(お客様)は、あなたのことを知らないし、知ったとしても信頼していないからです。

お客様にとって、初めて見る人、初めて会う人に仕事を依頼するほど信用が得られていないし、そもそもあなたのことを詳しく知らないし、あなたに興味がないのです。

だからこそ、開業する前にマーケティングを習得して、売るための仕組みを作り、見込み客を集め、見込み客の方と良い関係を作り、信用してもらい、それでようやく依頼してもらうのです。

はっきりいって、そこまで到達するには相当な時間がかかります。たかだか一ヶ月や二ヶ月では難しいのです。直ぐに儲けようとは考えずに、3ケ月先、半年先、1年先を見据えて、じっくりお客様からの信用を得てください。
ですので、開業して直ぐには依頼は来ないと思って下さい。目先の利益に囚われると先が続きません。

もし、たまたま運よく依頼がきても「格安でよろしく」とか「大幅値引きでよろしく」というのが多いです。「格安でよろしく」という人は、あなたとの信頼関係がなく信頼を築いていないからこそ、値段だけで依頼してくるのです。

きっと、マーケティングを習得して実践しないと、開業しても知り合い以外からは1年はまともにお問い合わせすらもらえない状況に陥ると思います。
行政書士として事務所を維持していきたいと思うなら、開業前に必ずマーケティングを学習して、集客力を身に着けてください。さもないと、せっかく開業しても廃業への道まっしぐらです。

毎度毎度、同じ質問をして申し訳ありませんが、これらの質問に明確に答えられますか?

  • 他の熟練行政書士ではなく、なぜ新人行政書士のあなたの事務所に依頼しなければいけないのですか?
  • あなたの事務所に依頼するメリットは何ですか?
  • あなたに依頼すると、どんな良いことがありますか?

現役会社員、現役公務員の方々からのご相談です。

ここでは、実際にお電話やお会いした人から頂いた、独立、開業に関するお問い合わせやご相談を記載してみました。回答が参考になるかどうかわかりませんが、いちよ記載しておきます。

独立、開業してどうですか?

たまにお電話で「独立、開業してどうですか?」とのご質問があります。

答えは「楽しくて、やりがいがあります」でしょうか。
なぜなら、自分の強みを生かした仕事ができ、やりがいのある日々を過ごせる。独立したら本当にこれに尽きます。自分で時間の管理ができ、物事を自分で決める、そして自分の強みを活かしたサービスをお客様に提供できるのです。

例えば、米アップル社の元スティーブ・ジョブズ会長の名言「もし今日が自分の人生最後の日だとしたら、今日やる予定を私は本当にやりたいだろうか?」に当てはめると間違いなく「YES」です。

もし、現在の仕事にやりがいを感じず、毎日職場と自宅の往復、ただ寝るだけに帰る毎日で、人生楽しくなく、生きた心地がしなければ、開業も良いかもしれません。

職業転向は、前向きな人のためだけのものではありません。苦しんでいる人で積極性がないと言われようがダメ人間と言われようが、その人にも当然やりがいのある日々を送る権利はあります。毎日苦しい思いをして、精神的、体力的に疲弊するぐらいなら覚悟を決めて転向するのも一つの選択肢かもしれません。

ただし、くどいようですがマーケティングは必ず習得してください。これがないと集客だけはどうにもなりませんから。

私で食っていけるでしょうか?

会社員の方からの電話でのご質問で、「私で食っていけるでしょうか?」と聞かれたのですが、そう思っている段階ではきっと厳しいでしょう。自分の強みをしっかり理解し、お客様があなたに依頼したら○○な気持ちになると伝えられるようにすべきです。

行政書士になって、お客様にどんなサービスが提供できるのでしょうか。行政書士になってご自身の強みを活かせることは何ですか?お客様に「ニコッ」って喜んでもらえることは何ですか?

どれくらい稼げますか?

メールやお電話での「開業初年度はどれくらい稼げますか?」とのご質問も多いのですが、はっきり言います。パソコンの前に座って依頼を待っているだけでは、収入は全くありません。もしかすると0円かもしれません。

残念ながら集客を実践しないと稼げないのです。行政書士になったら、ホームページ、名刺、チラシにご自身の氏名、事務所所在地、そして顔写真も掲載するのです。ご自身の顔写真をホームページで公開できますか?

以前「営業経験なし、顔写真の掲載はちょっと無理、でも初年度の収入は今と変わらない600万円はほしい」とお話しくださった公務員の方がいますが、そんなに甘くはないです。個人事業主はお客様にご自身を信頼してもらわなければ話になりません。顔写真すら載せられないと個人事業主は厳しいです。個人事業主は会社の看板を背負っての経営とは違いますので、顔写真を公開できないのでは、正直依頼されるのは難しいです。

一度、ご自身が依頼者になった気持ちで考えてみましょう。ホームページで顔も分からない人に依頼したいですか?

行政書士になったら、どんなことをしたいのですか?行政書士になってから「行政書士なんてダメじゃん」とならないために次のことを確認してみてください。

  1. 行政書士の仕事は好きになれそうですか?
  2. あなたの強みは何ですか?
  3. 他の熟練行政書士事務所ではなく、新人のあなたの事務所に依頼する理由は何ですか?
  4. お客様があなたに依頼したら、どんな良いことがありますか?
  5. マーケティングは習得する気はありますか?事務所で待っていてもお問い合わせすら来ません。売る仕組みが必要です。
  6. 開業初年度、もしかしたら収入は0円かもしれません。それでも大丈夫ですか?事務所の宣伝費はありますか?Yahoo!やGoogleのリスティング広告に毎月4、5万投資できますか?収入が0円でも2,3年生活できるくらいの預貯金はありますか?
  7. 行政書士で稼げなかったら社労士の資格をとる、そんな考えを持っていませんか?行政書士で稼げないなら、他の資格を取っても稼げません。
    なぜなら、ご自身のサービスを売る仕組みがないからです。資格だけ取得しても難しいのです。

60歳で定年退職して、行政書士になれますか?

定年退職後に行政書士を希望する人は多いのですが、特に年齢は関係ありません。50歳だろうが60歳だろうが、やる気と気力と健康があれば大丈夫かと思います。

でも、ひとつだけアドバイスすると、40歳だろうが50歳だろうが60歳だろうが、行政書士を開業するということは、あなたは「経営者」になるということです。開業したからには、事務所を安定して経営していかなければなりません。

その覚悟はありますか?退職金があるからしばらくは大丈夫なんて考えていたら、結局依頼がなくて、「なーんだやっぱり行政書士なんて全然稼げないじゃん」となってしまいます。

そうならない為に、あなた自身で集客して依頼を受けて事務所を切り盛りしていかなければならないのです。

60歳で気力も体力も健康も十分で、やる気もあるなら良いですが、そうでなければ、行政書士会に会費を納めるだけの良いお客様になりかねません。

行政書士はネットで批判が多くて不安な人へ

行政書士になるのは、ネットで批判も多くちょっと不安」という人は結構多いかと思います。

お気持ちはよくわかります。ネットの批判は顔が見えない分、容赦ないですからね。きっとご本人としては、引け目を感じるのかもしれません。でも、行政書士はりっぱな職業です。きちんと許認可をとって役所とお客様との橋渡しをしたら、お客様から凄く感謝されます。ですので、批判は気にせず、お客様に最高のサービスを提供してください。

ここで大切なのは、行政書士になることが目的ではありません。そうではなく、「行政書士になって、依頼者に良いサービスを提供してお金を頂く」ということが目的なのです。

開業後、あなたは『経営者』なのです。行政書士はネットで批判が多いから不安と考えるのではなく「お客様にどんなサービスを提供すれば、経営が安定するのか?」を考えたほうがよっぽど今後のためになると思います。

会社を退職する決断ができない!!

現役の会社員の方、公務員の方で行政書士で開業したいと考えていても「決断は何度もしたけど、結局踏ん切りがつかない」という人は多いと思います。

長年会社にいれば嫌でも愛着がつきます。しかも給料は毎月もらえるし、健康保険や年金の掛け金は知らないうちに引き落とされて、いくら払ったなんて気にする必要もありません。

でも、開業すると状況が一変します。市民税の納付書や国民健康保険料、年金の掛け金の請求がどしどし来ます。そんな恐ろしい状況になることを安易に決められるわけがないのです。

少しでも迷いがある、不安があるという方は、悩めるだけ悩んだほうがいいと思います。決めるのはいつでもできます。

「決断ができない」「迷いがある」「不安がある」時はそのまま時が過ぎるのを待ちましょう。無理に独立しようとか自分を追い込むために退職しようなんて考えるのは絶対に良くありません。ストレスが増大するだけです。

何のアドバイスにもなりませんが、そのまま、なんとなく毎日を過ごすのはいかがでしょうか。長い人生ですから、たまには無駄と思える時間をひたすら過ごすのもいいものです。あえて無駄な時間を過ごして、それでも「行政書士になりたい」と思うのでしたら、ぜひ開業しましょう。

退職する前はどんな感じでしたか?

退職したら今までの環境は一変しますので、それはもう、言葉では表せない物凄い決断が必要です。私の場合、退職前は毎朝、毎朝、目覚めるたびに「強い決意」を自ら確認する毎日でした。誰であれ、きっと退職届を出すまでは相当な期間を悩むことになります。その悩む期間があとから重要になってきます。その期間があれば「あの時決断しなければよかった」なんて思うことはなくなります。開業したら前に進むだけです。

開業したい、これから開業を目指したいとお考えの方もきっと相当な覚悟を感じていることと思います。

ただし、覚悟だけでは結局、「頭で考えているだけ」ですので、退職するにはご自身にとっての環境の変化、例えば定期異動や出向など、何かしらのきっかけが必要かと思います。

今のところ退職して開業するには不安がある、迷いがあるという方は、たぶんそれらのきっかけがない限りは決断することは難しいのではないでしょうか。

決断できない方は、慌てて退職する必要はありません。十分な決断のないまま退職して、その後に後悔しても後戻りはできません。
今、どうしようもなく行き場のない気持ちがあっても、きっかけを待つことで何か解決することもあるかもしれません。逆に、異動したら「異動先の課はすごく居心地が良かった」なんてこともあるかもしれません。

私から言えることは、一時的な気の迷い、安易な考えで行動するのはやめましょう。退職して開業する、開業しない決断にかかわらず、待つことも良い解決策の一つです。退職してしまえば、今となっては「退職する」なんてことは、全然たいしたことはないのですが、退職する前はあれこれ考えてしまうことは致し方ありません。誰でも同じです。でも、その悩んで考えた時間が後々非常に大切になってくると思います。

会社を退職して行政書士になりたいと悩んでいる人には、気休めにもならないかもしれませんが、ひとつ言えることは、自分でやりたいことをやる、これが一番です。そうすると後ろを振り返ることはほとんどありません。常に前を向いて生きていられます。

会社と自宅の往復だけの毎日を過ごして「このまま定年退職したらきっと後悔するんだろうな」と思うことがあれば、人生は一度しかありませんので挑戦することも選択肢の一つです。家族の理解を得て、資金も十分用意して、マーケティングを習得して、これで万全と思ったら、挑戦するのも良いかもしれません。ただし、最後に決断するのは、やはりご自身ですけどね。

退職を決めるまで、職場の同僚、上司には絶対秘密に

相談だけなら、私にでもご相談下さい。退職せずとも、職場の人に知られることも、なおかつ人事課に知られることもありません。職場の同僚、上司に「辞めて行政書士になる!!」なんて知られたら、その先の会社員人生、公務員人生は終わってしまいます。

一度、同僚や上司につい話してしまったら最後、取り返しがつかなくなります。
同僚に「秘密にね」と伝えたところで、秘密にするはずもなく、次の日には「あいつ、辞めて行政書士になりたいらしい」と興味本位の話があっという間に職場内に広まってしまいます。ですので、職場の同僚、上司には決して話してはいけません。

どんなに信頼のある同僚、上司でも、その方たちも一度は「独立」を考えたことがあるはずです。
ついうっかり話してしまったとか、信頼して話したつもりなのに、「退職」や「独立」はたまた「開業」の二文字を聞いた途端、興味本位で噂は直ぐに広まります。

職場の同僚、知人、ましてや人事課には、退職する決断が出来き、実際に退職を決めるまで「退職する」とか「行政書士になる」とは、間違っても口にしてはいけません。他人はそういう事には敏感に反応します。絶対に言わないことが重要です。あなたが今考えている「独立・開業」は絶対に秘密であり、準備も退職も慎重に。